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『新しい哲学を語る』
梅原猛・稲盛和夫著 PHP研究所 2003年 1300円
推薦者:三箇功悦
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法隆寺論、柿本人麻呂論で有名な学者梅原氏と京セラ、第二電電の経営者である稲盛氏のお二人が、最近の日本をとりまく問題について対談の形で語らいながら、今後の日本の進むべき方向性について多くの示唆を与えています。内容的には哲学なき現在の日本の問題を発端に、道徳、宗教、「利他」の精神等について幅広くかつわかりやすく言及しています。以下個人的に気に入った部分をいくつか紹介します。
戦後50年経って、日本に哲学が無いという欠点が明らかになってきました。・・・小泉首相は就任以来しきりに「構造改革」という言葉を使っています。しかし構造改革には哲学が必要です。世界の文明がどのように進むのか、そしてその文明の流れの中で世界はどのような態度をとるのか、こういう世界文明の流れ、国際関係の中で、日本の伝統をはっきり自覚し、その伝統を生かして日本はどう生きるかという政治哲学が必要です。しかし小泉首相の構造改革にはそれが皆無です。彼はそういう哲学の必要性すらわかっていないのです。彼はある種の天才ではないかと私は思います。自分が格好よく見え、自分の人気を高めることが何かを直感的に判断することには彼は大変な才能を持っています。
今の世の中は、本音で生きる人よりも、建前で生きる人のほうが、「世渡りがうまい」と評価される。哲学や信念に忠実に生きるのは、むしろ世渡りがへたで要領が悪いことだといわれる。・・・哲学に従って生きる人を容認する社会をつくることが今の日本には急務なのかもしれません。・・・・・今最もフェアであるべき教育界や政財界でも、またルールを守ることに厳格であるべきスポーツ界でも、範を示すべきリーダーの人達が、フェアでない生き様をしています。そんな姿を見せつけられるものだから、一般の人々も「うまく世渡りをすればいい」と誤まって理解しています。・・・・みんな抑制が全く効かなくなっているのです。それで自利を選んでしまう。最近の企業を見ても、自利を選んだ結果、大きな犯罪を犯してしまうケースも少なくありません。・・・いずれにしろ日本の指導者たる人たちの道徳は、非常に退廃していると思います。
今の日本人は今一度道徳心を取り戻す必要があるように思います。道徳心や宗教心といったものがないと私心なく行動することもできないでしょう。・・・戦前の日本には大日本帝国憲法があり、その対の存在として教育勅語がありました。これが、国民の道徳教育となったのです。ところが戦後の日本国憲法では、対になる道徳がつくられていません。仏教を基本として、そこに神道や儒教やキリスト教も入れる、・・・もっと思想的に豊かで、伝統に則った道徳を、日本人の力でつくりださなければいけません。
今回の同時多発テロ事件に端を発したアメリカとタリバンの戦いというのは、たんにキリスト教とイスラム教の戦いではないと思うのです。・・・イスラム世界の人たちは、近代化に遅れをとって資本主義も経済も発展しなかった。そのために貧しいままに現代を迎え。「自利」の追求がなかなか果たせない。その反動として、すべてを投げ打って神に仕えるという、極端な「利他」の方向へ、つまり最も古典的で最も厳しい原理主義的な宗教の方向へ向かわざるをえなかったのです。・・・今回の戦いは最も古典的な宗教観に凝り固まった集団と、宗教を喪失した集団との戦いとみることができるのではないか。・・・・今のアメリカはもはやキリスト教の国ではなく、いわば国家を神と仰ぐ、ナチスドイツのようなキリスト教を信じない一神教の国になっているのです。そこで信じられるのは武力とお金だけです。・・・アフガニスタンを破壊し、いまイラクにも攻撃を仕掛けようとしている。それは憎しみの拡大再生産しかもたらしません。
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