■日本の心を美しくする 今月の当会推薦書籍


 「中坊公平・私の事件簿」
 〜事件が弁護士を育てる〜
 集英社新書刊  660円(税別)
 中坊公平著
 推薦者:愛川 良樹




" 政府の司法制度改革審議会は6月12日、意見書を小泉純一郎首相に提出した。" という内容が翌日の各新聞の一面を飾っていました。

その司法の一役を担う弁護士という職業については、どういうことをしているのか知っている人はおよそ関係者かTVドラマか映画等で見るくらいではないでしょうか。

この著者は著名な弁護士でありTVなどで見かけられた方も多いと思います。朝日新聞にも「金ではなく 鉄として」というコラムを毎週連載されていますし、ホームページにもバックナンバーがあります。
(参考:http://www.asahi.com/column/nakabou/list.html

理想とする弁護士として申し分のない方の書籍についてご紹介したいと思います。


■約500件を越す事件の中の14件

御年は70歳を超えてもなお現役で、精力的に事件に立ち向かっていかれる姿を思い浮かべることができます。新米弁護士の頃から現在までの教訓を様々に織り交ぜながら、心に残る14件を抜粋され、一般の人でも分かるようにやさしく書かれた書籍です。

「はじめに」の中で―――

落ちこぼれで出来の悪い私でしたが、さまざまな事件を担当することによって徐々に成長していきました。事件が私を鍛え、その都度さまざまな教訓を与えてくれたのです。
 
と言われています。


■あまりにも有名な事件

14件の大半の事件がTVや新聞をにぎわせた事件で、あまりにも有名な事件ばかりです。
当事者でもない限りわからないこと、理解できないこと、事件の本質についての発見と驚きの中で、いかに認識不足であったかということを思い知らされます。
 その一つ一つの事件が、著者と同じような気持ちに引き込まれ、著者の教訓が私達にも教えてくれているのに気付かされることでしょう。


■弁護士・中坊公平の誕生

 ケース1(1960年)「H鉄工所和議申し立て事件」が実質のデビューだそうで、思い出深いばかりではなく、今の著者があるのは次のように本文の中で言われています。

私には、私を引き上げてくれるような法曹界のボスはいないし、ツテもコネもない。ましてや不勉強で特に法律に強いわけでももない。そんな私がこの世界で生きていくためには、誰より現場を知り抜くしかないんだということをこの事件を通して悟りました。(中略)

事件を繙(ひもと)く本質は法律にあるのではなく現場にあります。現場の中に小宇宙があり、現場に神宿る――私はそんなふうに考え、今日に至るまで「現場主義」を貫いています。
この事件が全てでした。今ある弁護士・中坊公平はこの事件を手がけることにより誕生したのです。


■本物の弁護士

この「事件簿」に流れている精神については、著者の精神にも置き換えられるように本文中で次のように熱く語られています。

人間というのは、ただひたすら、懸命に、ひたむきに生きていかなければならない。ひたむきさがない人間には心を揺り動かされない。(中略)
さまざまな事件と取り組む中で、自分のためではなく、みんなのためにひたむきに頑張らないとだめなんだということを学び取ってきたということが、この「事件簿」全体を流れている精神ではないかと思う。

と本物の弁護士であるがゆえに、命がけで本気に人のために動く人がいたのでした。このようなことは誰にでもできることではないと思います。

冒頭の新聞に掲載されている"司法改革"の基本は、人材の育成を重視しているようです。が、弁護士・中坊公平氏の精神を受け継ぐ人が、ひとりでも多く現れることが望まれているのではないかと思います。誰もやらないようなことをしかもお金のためだけでなく、人のために尽くす人が法曹界にも求められているのではないでしょうか。

この書籍はそういった関係者の方々にはもちろんのこと、ぜひ読んでいただきたいと思いますし、これから司法の世界を志す方には必読の書でもあります。
皆様もぜひご一読ください。





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