■日本の心を美しくする 今月の当会推薦書籍


「空海の風景」

 著者 :司馬遼太郎 (中央公論社;上巻、下巻/単行本と文庫本有り)
 推薦者:南 久雄



 弘法大師空海という日本が生んだ宗教界の巨人について語るとき、著者は多くの史実を調査して空海が生きていた800年頃に私達をタイムトリップさせ、空海が見たであろう風景を描写しつつ、空海の思想と息づかいを私達に感じさせてくれる手法をとっています。その意味で歴史ファン待望の書籍といえます。

 又、密教がインドに生まれ中国においてオリジナルな教えに昇華した後日本に伝えられる過程の描写は、仏教史に興味をお持ちの方々にも大変参考になると思われます。
 本書の内容が豊富すぎるので、私は次の2点に絞って紹介したいと思います。

・空海のプロフィール
・密教の系譜

又、私の考察を”空海の時代背景と現代(類似点の比較)”にまとめましたので、読者のご意見を伺いたいと考えております。


■空海のプロフィール
  1. 空海の誕生から宗教的覚醒まで
    空海は774年に四国の讃岐国(香川県)、佐伯氏の子供として生まれ18歳の時大学に入り、たちまち俊才ぶりを発揮した。仏教を行学する志をいだき、「三帰指帰」という日本初の戯曲をつくり、仏教が儒教より優位であることを主張して退学した。
    約7年間全国を放浪し、求聞持法などの厳しい修行をなし、室戸の洞窟で明星が口の中に飛び込んでくるという神秘体験をした。以後名前を「空海」と改めた。

  2. 恵果から密教の正統後継者に指名され、日本に真言密教を弘めた
    空海は31歳の時、遣唐大使の一行と共に、苦難の末唐の長安にたどりついた。青竜寺の恵果から密教の正統後継者に指名され、翌年(806年)多くの経論を持ち帰国した。
    36歳の時、京都の高雄山寺(神護寺)で真言密教の法灯をかかげ、嵯峨天皇の外護のもと真言宗の発展に努め、43歳の時高野山の開創にとりかかり62歳で他界した。
    この間、天台宗の最澄に灌頂を授けたり、「十住心論」など多くの著作をなすと共に、文才にもすぐれ能筆家としても有名であった。
    又、多くの人々の救済や教育にも輝かしい業績を残した。
    ・四国の満濃池の修築 
    ・当時としては画期的な一般庶民を受け入れる私立学校「綜芸種智院」の設立


■密教の系譜

密教は元々仏教的でない内容をかなり含んでいましたが、中国の最盛期(唐の時代)にオリジナルな教えとなり空海に伝えられました。この時の3人の重要人物にスポットをあて表1にまとめてみました。

表1 密教の系譜
継承者
内 容
備 考
1.不空三蔵
(705〜774年)
・西域に生まれ、中国長安で金剛頂経の系統の密教を学んだ。自らインドに赴き多数の経論を持ち帰り、中国語に翻訳するかたわら、玄宗皇帝以下3代の帝につかえ中国の密教に大きな役割を果たした。
2.恵果
(746〜805年)
・不空から金剛頂経の密教を授かり、善無畏三蔵の弟子の玄超から大日経系の密教をも授かり、密教の総合継承者となった。
・他界する間際に、若き日本の僧空海を一目見るなり法を継ぐ者として指名した話は有名。
3.空海
(774〜835年)
・この世の栄達のための仏教でなく、釈迦が悟りを開いた時の体験を求め、新興の密教にひかれた。
・修行方法において、教典を学ぶことを重視する最澄と対立した。
・空海は一代にして密教を体系化し論理化してしまったが優秀な弟子が続かなかった。
・空海は政治的駆け引きにも長じていた。長安に入った後すぐに恵果に会わず、空海の詩文や文筆の才の風聞を流させ恵果をじらした。



■推薦者の考察ー空海の時代背景と現代(類似点の比較)
  空海の生まれた時代は日本の律令国家体制が動揺し、多くの人々が苦しんでいました。空海はこれらの人々を救済し、新しい時代に橋渡しするために生まれてきたように思われます。
 又、表2に示しましたように現代と多くの類似点をもっています。
 しかし、現代は日本を含めた世界的規模での危機の時代であり転換期であるので、空海以上の偉大な救世主が生まれても不思議ではないと思われます。

表2 空海の時代背景と現代(類似点の比較)
空海の時代背景
現 代
【1】政治と宗教
  1. 律令国家の動揺
    ・平城京(奈良)において貴族や寺院の勢力が拡大し、政争が激化。
    (例)道鏡による政治乗っ取り計画
    ・苦役に耐えかねた農民の逃亡。
  2. 宗教の救済力低下
    ・南都六宗として仏教が哲学化し、救済力が低下。
  3. 平安遷都(794年)
    ・桓武天皇は、都を平安京に移すことにより政治革新と疲弊した財政の立て直しを図った。
【1】政治と宗教
  1. 戦後50年体制の動揺
    ・日本の政治の流動化と危機管理能力、リーダーシップの不在。
    (例)北朝鮮の不審船の逃走を許した主権意識の欠如
  2. 形骸化した仏教
    ・「無我の思想」を唯物論的に解釈し、葬式仏教としてビジネス化している。
  3. グローバルスタンダードと日本の開国
    ・護送船団方式の崩壊とデフレ大不況。
    ・世界的大競争時代を迎え、日本の産業構造の変革が迫られている。
【2】文化と社会の世相
  1. 世界文化(唐文化)の輸入
    ・遣唐船を派遣し、西のサラセン帝国と並ぶ世界の強国唐の文化を積極的に輸入した。
  2. 疫病と富士山の噴火
    ・朝鮮半島から日本にほうそう(天然痘)が伝わり、全国に大流行した。
    ・富士山が800年に噴火した。
【2】文化と社会の世相
  1. 現代日本は東洋・西洋両文明の合流点
    ・明治維新に成功した日本は、和魂洋才のもと西洋文明を積極的に吸収した。
  2. 疫病と世界的異常気象
    ・エイズの世界的蔓延と新たな病気(狂牛病等)の発生。
    ・世界的な大洪水、旱魃や火山の噴火(ピナツボ山等)。
  3. 世界宗教の出現を待望
    ・現代の世相を見るにつけ人々の潜在意識において、民族の違いによる憎しみを克服し、人々の心を癒し、世界を繁栄に導く世界宗教の出現を待ち望んでいるのではないか?


 今年1999年はノストラダムスが予言した世紀末の危機の年であり、金融不安を中心とした大不況に直面していて、何が起きてもおかしくない状況と思われます。一方でノストラダムスは、次のような希望の予言も残しています。即ち、ヘルメスの繁栄が日本に訪れ、その繁栄が世界を救うであろうと、予言しました。読者の皆様が、この本を読まれその答えを見つけられることを希望します。

以上





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