一代で大企業「松下電器産業」を育て上げたことで著名な松下幸之助氏は、自らが創設したPHP研究所が30周年を迎えた昭和51年(1976年)に、21世紀初頭の日本はこうあるべきだ、こうあってほしいとの願いをこめて「私の夢・日本の夢 21世紀の日本」という書籍を出版しました。 未来小説という体裁をとって数多くの提言をされています。これから数回にわたり、松下幸之助氏の提言をみなさまと共に学んでいきたいと思います。第一回目は「西暦2010年の日本」の序章から、松下幸之助が描いた日本の理想像を探ってみましょう。 「西暦2010年のはじめ、権威ある国際的な一機関が、世界人類の真の繁栄、平和、幸福実現の資とするために、各国の協力を得て、百万人におよぶ人々を対象に行った大がかりな国際世論調査の結果が発表された。その一項目に、「今日の世界において、最も理想的と思われる国はどこか」という質問があり、一人が三ヶ国ずつ答えるようになっていた。ほとんどの人がその名をあげ、圧倒的に一位をしめたのはほかならぬ日本であった。」という書き出しである。「その理由として寄せられた回答は、 1.「豊かな生活」…開発途上国の国々の人から多く寄せられた。 国民所得で世界のトップクラスで、税率は低く、富の分配が正しい意味で 公平になされ、すべての国民が高い生活水準を享受している。 2.「物価の安定」…先進国の人に多い。 3.「日本人のモラルやマナーのよさ」…各国が共通で賞賛するところである。 外国人は、日本人は礼儀正しく親切であり、どこも美しく整頓され、ゴミ 一つない状態に感心していた。 どの国においても日本人は親しみと尊敬の念で迎えられ受け入れられている。 4.「自由と秩序」 5.「青年が希望をもって生きている」「老人が大切にされている」 青年は、みな適切なしつけ、教育を受け、それぞれに生きる目標をもち、 自分の適性を生かしながら、よりよき人生、よりよき社会をめざして貴重な 青春の時を生きている。 老人は、社会のために適当な活動をしつつ、喜びと張り合いを感じながら 日々を送っている。 6.「日本の歴史、伝統」「日本の皇室の存在」 7.「政治の安定」 与野党の対立はあるが、何が日本のためになるかという共通の基盤に立って 対立しつつも調和し、大きな混乱もなく、生産性の高い好ましい政治が 行われている。 8.「日本は世界に貢献している」 日本は物心ともの豊かさをもって、各国の繁栄、発展、さらには世界の 平和に力強く貢献している。自国中心だけでなく世界全体の調和を考える 日本国民の精神がしだいに理解され、さまざまな国際紛争においても、よき 調停役としての役割を果たしている。 などであった。 日本はいわゆる徳行国家、平和国家として、国として総合力を高め、力強い自衛体制を保有する国家として好ましい国となったのである。問題も残されており、エネルギー問題や食料問題などである。」 しかし、松下氏は「30年前には、経済的には高度成長はなしとげていたが、その経済自体にも数おおくの問題を内蔵していたし、そのほか政治とか教育、さらには国民の精神面など多くの点で混乱混迷の状態にあったことも一面の事実である。」と指摘している。ではいかにして、日本は理想的な姿にもっていくことができたのか、次回は松下幸之助の政治観に学んでみたい。 (参考書籍:松下幸之助「私の夢・日本の夢 21世紀の日本」PHP文庫(1994) 原書は1976年に発刊されています。雑誌「THE21 10月特別増刊号(1994)PHP研究所 ) |
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