「フランケンの朝は、雨が降らないかぎり、保育園のお友達と庭で遊ぶことからはじまります。」という書き出しで始まるこの本は、近藤 雅則さん(40)という方が手記を出版されたものです。 私が初めてこの方のことを知ったのは、今年の3月に朝日新聞に「コンニャク先生がんばる」という見出しで、社会面の3分の1近くを埋めた記事との出会いでした。その記事には、近藤さんが足でパソコンを打たれている写真が載っていました。 近藤さんは、神奈川県座間市内の私立「座間子どもの家保育園」に勤める脳性まひの「保父さん」で、園児がつけたあだながコンニャク先生で自分のことをフランケンと呼んで手記をまとめられた方です。フランケンというのは、養護学校時代につけられたニックネームだそうで、顔が角張っていて、スポーツ刈りの頭がデコボコで、フランケンシュタイ ンに似ていたことで、そう呼ばれるようになったそうです。 この本の中では随所に自らが障害児という立場を乗り越えて、子どもたちの目線に合わせようとする姿勢が表れています。自分の目線ではなく、子どもたちの目線に合わせる努力は、なみなみならぬものであったことでしょう。それを克服していくなかで、目線が合ってきた時に「ウケてる、ウケてる」という表現で心境を語っておられます。 また、保育園とは「遊びながら社会のルールや他人とのつきあい方を学ぶところ」と答えられているそうです。 『保育園にはさまざまなお友だちが来ます。自分とちがう子がいてもそれを個性として認め、いっしょに助けあって生きていくことが自然に身につく場。それが保育園ではないでしょうか。』 とも言われています。ここに教育の原点、現在の学校教育に不足しているものが浮き彫りにされているような気がします。お互いを認め尊重しあう姿勢を、子どものころから親が教えるのが本来の役割であるにもかかわらず、見てみぬふりをしたような学校教育まかせ的な社会の空気に対して、新鮮に感じられすがすがしさが蘇ってきます。 養護学校時代の苦い体験から、人の痛みの分かる「りっぱな青年」としての境地を自らの力と周りの人の協力で切り開いていかれたのだと思います。自分の力でがんばろうと思った時、自分以外の見えない力がものすごく大きな影響力となって、その人の人生を変える転機になり得るということを改めて考えさせられました。 この本は、わずか78ページの本ですが、実に多くの問いかけを私たちにしてくれますし、多くの回答もしてくれています。 今、何かものたりないと思われる方にもこの本のご一読をおすすめします。また、子供たちにもぜひ読んでほしいと思います。保父さんという職業を通じて、フランケンの生き方から何かが学べることでしょう。 そして、私たちにとって「天使たちの贈り物」は何かを考えてみるのもいい機会ではないでしょうか。フランケンと違ったものに気づくのではないでしょうか。私たちは、あまりにも多くのモノが与えられております。その「ありがたみ」をつい忘れてしまいます。そんな時、ふとこの本を読まれると人間として何が大切なことか再発見できるのではないでしょうか。 この本の中にたくさんの絵を描かれた立花尚之介氏はこういわれています。「こどもたちとつきあうなかでフランケンは“ウケてる保父さん”なのです。このことに私は一縷の望みをたくし、フランケンにエールを送りたくなりました。障害が単にハンディキャップではなく、ひとつの個性としてとらえる感性がそこにあると思います。」 私たちも感謝とエールを送りたいと思います。人生の問題集に真っ向から前向きに取り組むフランケンとフランケンを支えられたご家族に。この保育園の関係者の方々に、またこの本を出版された方々に、そして何よりも子供たちに――天使たちに、送りたいと思います。たくさんの贈り物をありがとう。この贈り物を多くの人に分けてあげたいと思います。 |
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