■日本の心を美しくする 今月の当会推薦映画



映画『ギルバート・グレイプ』  〜あなたは何がほしいの?〜

公開:1993年(米)
監督:ラッセ・ハルストレム
主演:ジョニー・ディップ、レオナルド・でかっプリオ
推薦者:黒岩宏光



■あらすじ

アイオワ州エンドーラという田舎町に住むギルバート・グレイプ(ジョニー・ディップ)は、父親を無くしたあと、知的障害を持つ弟のアーニー(レオナルド・でかっプリオ)と肥満の母親の世話をしながら、近くの雑貨屋で働く平凡な日々を送っています。

この町から外へ出たことのない彼ですが、そんな彼の前にトレーラーハウスで生活する美少女ベッキーが現れます。自分の境遇と対照的な彼女に惹かれ、彼は恋に落ちます。


地に根を生やした主人公のギルバート役のジョニー・ディップは、「ショコラ」では逆に根無し草の男を演じています。また、障害児のアーニー役の若き日のでかっプリオさんの演技は非凡なものがあります。この演技で、アカデミー助演男優賞にもノミネートされ、その後の「タイタニック」で押しも押されぬトップスターになりましたが、彼の人気の裏には、演技における基礎がしっかりとあり、アイドル的な俳優ではなく、実力のある俳優さんであることがよくわかります。


■「あなたは何がほしいの?」

さて、映画の1シーンですが、家族のしがらみの中で生活するギルバートが、草むらの中で横たわり、知り合った少女ベッキーと会話をします。ベッキーに 「あなたは何がほしいの?」 と聞かれます。ちなみに、この映画の邦題は「ギルバート・グレイプ」ですが、原題は「What's Eating Gilbert Grape」です。What's Eatingの意味は、何を食べたの?ではなく、何をいらいらしているの?何を苦しんでいるの?といった意味があります。

自由人のベッキーから見れば彼が何を望んでいるかの質問は、彼の持つ悩みや苦しみを解放するためのピンポイント爆撃のような的を突いたカウンセリングでありましょう。

案の定、彼の答えは、「弟の脳を新しい脳に変えたい」「母にはエアロビのエクササイズを」「妹は早く大人に」・・・と家族のことを答えます。
「あなたには?」の問いにも、「もっといい人になりたい・・・」と言いながらも、彼はよく考えたことがないのでわからないと彼女に告げます。

このことは、ギルバートとは立場や環境が違えど、多くの方々にも当てはまることかもしれません。
私事ですが、私にもこのギルバートのように障害をもつ弟がいました。家族のこと、自分のこと、将来のこと、家族の幸福こと、自分の幸福のこと―――いろいろと思い悩む時期もあり、とても他人事と思えぬ内容でありました。家族のことで頭が一杯で、自分のことまで考える余裕のない主人公の気持ちはよくわかります。長い間、環境に支配され続けて、何がほしいのかを決めるのは自分自身であるという、ごく簡単で当たり前のことが 「わからない」 んですね・・・・・・

さて、映画は、弟アーニーの誕生日パーティまでの1週間足らずでギルバートの周りで起こるエピソードを、ベッキーとの恋愛を交えてほのぼのと描きます。とりたてて派手な内容ではないのですが、なぜか印象に残る映画なのであります。
「あなたは何がほしいの?」といわれ、よく考えたことがないのでわからない・・・と思われた方にはお勧めの映画です。



以上、ラッセ・ハルストレム監督特集でした。




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