■今月のコラム

「小さな親切は美しい」 〜前編〜
 記者:愛川 良樹



■ある夏の日の午後

 今年の夏も大変暑い日が続きました。いつもながら帰省帰りで混雑する駅のホームでも様々なドラマが生まれています。今年も何気ないひとつのさわやかなドラマに偶然出会いました。

 午後の混雑といってもまだ身動きのとれないほどの混雑状態ではない程度ぐらいでしょうか、とある東京近郊のある都市の駅のホームであった見落してしまいそうなささやかなそしてすがすがしい心温まる出来事に出会いました。


●黄色いハンカチ

 それはとても蒸し暑い日でした。黙っていても汗がにじんでくるホームに立っていると、そのホームを中年風のご婦人が荷物をいっぱい持って歩いておられました。「暑いのにたいへんだなー。お土産をいっぱい持って・・」と思っていると黄色いハンカチがひらひらとホームの端に落ちたのでした。あのハンカチはもしやあのご婦人のものではと思っていると、すばやく傍にいた若いOL風の女性が拾ってあげました。ご婦人がお礼を言っていました。そのOLの女性は当然のように会釈をしていました。その場に居合わせた数十人の人たちはその情景の一部始終を見ていたようでした。時間にしてわずか約30秒足らずの出来事だったと思います。

●すがすがしい気持ち

 親切な女性と言ってしまえば一言で終わってしまいますが、ここで見落してはいけない大切なことに気が付かされたのでした。「ハンカチを拾ってあげる」という一見誰でも当然行うであろうことをこともなげにすばやくやってしまったということが何ともすがすがしさを与えたのでした。私も含めて数十人もの人が見ていたにもかかわらず、このOLの女性がさらりと当然のように成し遂げてしまったことが、なぜか非常に感動的な出来事としていつまでも鮮明に脳裡に焼き付いてしまったのでした。その後もなにもなかったように振舞っていたのがあまりにも印象的でした。

 夏の暑い日に起きた何ともすがすがしい気持ちにしてくれた美しい出来事でした。そして、この女性がとても美しく天使のように輝いて見えました。

●親切とは

「親切にする」とは決して強制的にするものではなく、義務感でするものでもないと思います。人から要求されてすることでもなく、良く思われたいからするというものでもないと思います。人の目を気にせず自然な形で現れる行為が美しいのであって、見返りを求めずにしたいからするというふうなことを身につけるために生きていくことがすばらしいことではないでしょうか。私も含め多くの人たちがこの天使のような女性を見習っていきたいものです。

ただハンカチを拾っただけのことですが、その行為の奥に裏づけされたものが、単なる「親切にする」ということだけではない、と思わせる何かがあったように思えたのでした。回りの人をもさわやかに包んでしまう力を持っているということではないでしょうか。そして、回りの人をも幸福感にしてしまうような不思議な魔法の力を持っていたような気がします。

 大人はとかく恥じらいを持ち照れを隠して見過ごしてしまいがちです。子供の時のような純粋な思いで「親切にする」ということを今一度考えてみてはいかがでしょうか。

(後編に続く)






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