■今月のコラム

「最近の世相」を考える

 選者:山下宏



さて最近新聞紙上を賑わす話題は、大手企業の信じられないような出来事だったりします。乳製品の安全に関わる問題、自動車の安全に関わる問題、警察官の職務怠慢、病院の単純な医療ミスなど数多くの問題が発生しているように見えます。何故、このようなことになったのでしょうか。ちょっと考えてみたいと思います。

■「生産者中心」思想−「自己中心」思想

第一の視点は、「生産者中心」思想があいかわらず続いているということです。言い方を変えれば、「自己中心」とも言えるでしょう。最近、「顧客満足度」追求が企業のあるべき姿であるなどと言う言葉が聞かれるようになり、世の流れも、「消費者主流」の時代へ変化していると色々と言われています。

問題を起こした企業、病院、個人のどの場合にも、あてはまるのは「消費者」にどのような影響を与えるだろうか、患者さんにとって一番よい治療法は何なのだろうか、自分がもしこのようなことをした場合に、どのような影響を与えるのだろうかというような視点は、まったく欠落しているということだと思います。

自分の会社の利益獲得を最重要に考えたり、「手術は成功したが、患者さんは不幸にしてお亡くなりました」ということを何の恥じらいもなく公表したり、自分の責任を回避することに一生懸命であったりしています。そこにある発想の出発点は、あくまで私の会社、私の病院、我が社の自動車にあります。

間違っても、乳製品を日々愛用してくれている消費者、原料を供給してくれている生産者、痛みで苦しんでいる患者、万一の事故で、思わぬ怪我をした自動車の愛用者などが色々なことを考えるときの原点になっていないということです。従って、これらの問題への対応策の一つは、考えの出発点を「生産者」から「消費者・顧客」へ180度転換するということです。


■部分的な知識で、実際の問題へ対処する必要性

第二の視点は、部分しか把握できていない人が全体を扱っているという視点です。会社も初期の頃は、全体を見渡すことはそう困難ではありませんでした。大きな組織になればなるほど、一人の人間は組織の中の歯車のように一部を担っているだけになりがちです。組織の中で責任を任されるような立場に立つような人も会社の全てを経験することは不可能となってきています。部分的な知識で、実際の問題へ対処する必要性がでてきています。

しかし、多くの場合にはそのような事実すら認識されていません。松下幸之助氏が事業部制を始めてから、多くの企業で今でも事業部制が続けられています。事業部長は自分の事業部にとって最適な解を求めようとします。しかし、それが全社的な視点で見たときにも最適な解であるかどうかをきちんと評価している組織体はどれだけあるでしょうか。

技術の進展は技術分野を細分化し、技術者と言えども自分の専門分野を離れるとわからない状態を生み出しています。研究所の所長は部下が提案した研究テーマの詳しい内容については理解できない状態で、そのテーマを取り上げるべきか否かの判断をしなければなりません。所長は何を基準において、判断を下そうとするのでしょうか。私たちは、僅かな知識をもとに判断をしているのだという謙虚さを失っているのではないでしょうか。


さて、第一の視点で、180度の転換をと言いましたが、これでも十分ではありません。この世界は、円環状になっています。今はやりの言葉では双方向である必要があるということです。環境学者に言わせれば、完全リサイクル型でなければならないということです。 宇宙船地球号に乗り合わせている我々は、お互いに支え合って生きていくことが必要です。争いや自分だけが生き残ろう等という愚かな考えでは、人類はロシアの潜水艦のように海の藻屑となってしまうでしょう。人類はそんなに愚かなのでしょうか?






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