■シリーズ「ワールド・スピリット」 世界の文化を訪ねて

引き続き、番外投稿編「エジプト」からのレポートをお楽しみ下さい。

番外投稿編 エジプト2
「不思議な時間」  記者:津田孝子


「バクシーシ攻撃」に閉口してしまった私だが、エジプトには見るべきものがたくさんある。
6000年も残るジェセル王の階段ピラミッドをはじめ、列挙すればキリがないほどの遺跡の数々を前にして驚きと感動の連続である。

そんな中、ギザの街中でこんな光景を見かけた。
荷車を引いたロバにまたがった少年が道端をトボトボと通ってゆくすぐ横を、白い大きなベンツが砂埃を立てながら走り抜けていく。車が残した砂埃の向こうにピラミッドが見える―。
なんとも不思議な気持ちだった。

エジプトは古代文明発祥の地であり、ナイル川流域に住む人々の歴史からとすれば8000年もの歴史になるという。数多くの王朝時代を経てクレオパトラ7世を最後にローマ帝国に支配されるとキリスト教の影響が広まるが、その600年後にはイスラーム軍によって属州となる。
さらにナポレオンによるフランス軍のエジプト支配があり、フランス軍が撤退したあともイギリスによって統治され、実質的な独立を果たすのは1952年のことである。

このように8000年という恐ろしく長い歴史のなかで、この2000年間は他の民族の支配下にあった。言ってみれば、現在の独立国であるエジプト・アラブ共和国の歴史はまだ50年足らずである。
しかし、私にとってのエジプトは教科書で習った世界4大文明の一つとしてのエジプトであり、「ピラミッド」や「スフィンクス」だ。

その古代にタイムスリップするような気持ちでエジプトへ行ったのだ。それなのに・・・。
カイロは大都会で、車も多く渋滞している。(余談:ちょっと外れると信号機がないのは普通のこと。にもかかわらず、かなりスピードを出して走っている。これで一度も事故を見かけなかったのだから、エジプトの人々の運転技術はかなりのモノ(?)である。)

三大ピラミッドがあるギザだって、わりと大きな町だ。市街地のすぐ隣にピラミッドがその雄姿を見せている。
「古代のロマンを求めてエジプトまで来たのに。なぁんか違う・・。」そんな不満がチラリ。
だが、夢を語っているのは単なるワガママだった。そう。時間はどんどん過ぎていたのである。



今ではアラブ世界の仲間入りを果たしており、主要国でありながら先の湾岸戦争では親米路線を貫くなど独自のカラーを見せている。もっと現実に目をむけなきゃ!
とはいえ、エジプト独自の文明を築いて数多くの遺産を遺しながらも、キリスト教やイスラム教などのさまざまな影響を受けてきた国。エジプトって本当はどんな国なのだろう?誰か教えて!!

そんなことを考えていたら、先述の光景を見かけたのだった。
ロバにまたがった少年と白いベンツと巨大なピラミッド。時空間が捻じ曲がったような気分だった。

「混沌」・・

この言葉がエジプトにはよく似合う。古代と現代が同居している国。文明も文化も混在しているが融合していない、不思議な国。
「奇跡の輝き」という映画の中で「霊界には時間が存在していないんだ」と言っていたけど、エジプトにも時間が存在していないような気がする。広大な砂漠という先の見えない環境がよけいにそういう思いを彷彿とさせるのかもしれないけど、砂漠の中で、確かに時間は止まっていた。

エジプトの人々は陽気でパワフルだ。そのパワーは現在を生きる人々の強さを感じる。でも、頭越しに見える光景はやっぱり2000年以上も前のもの。
やっぱり私にとってのエジプトは2000年前で時間が止まっている。ベンツが走っていてもやっぱりここは2000年前のエジプトだ。シーザーとクレオパトラに会えそうな気さえしてくる。
いや「私にとって」ではなく、エジプトの人々にとってもそうなのではないだろうか。歴史の遺産で食べている国・・・といった印象がどうしても否めないからだ。


「止まっている時間」と「バクシーシ」の向こうにあるのは何だろう。
現代文明の発祥の地、エジプト。現在のエジプトを創ってきたのが過去の人々なら、未来のエジプトを創造していくのは現在の人々だ。今度エジプトに行くことがあったら「今」のエジプトを見てこよう。「今」の中にこそ未来の姿があると思うから。




次回「ワールド・スピリット」は、スペインの予定です。



 [World Spirit ヨーロッパ編] [World Spirit アジア編] [Home