■シリーズ「ワールド・スピリット」 世界の文化を訪ねて

スペースシャトルで宇宙に飛び立った飛行士の方々は、漆黒の空間に浮かび上がった、
うるわしき星、私たちの地球を眼下にし口をそろえて語ります。
「この地球に、地図で描かれているような境界線は無い。」 −そうです、境界線など無いのです。
しかし、残念なことに今でも地球上のあちらこちらで紛争、内乱、対立が絶えません。
政治の問題でしょうか、宗教の問題でしょうか、民族の文化の問題でしょうか。
その原因の根本は、お互いを認め、受け入れる事ができない事に端を発しているのではないでしょうか。
もっと相手を理解し、地球的規模のパラダイムシフトが必要な時期を向かえています。
世界の精神、文化を知り認め受け入れ、平和な未来への祈りを込めてこのシリーズは書かれていきます。

好評第2回目はケルト民族の風習が残るヨーロッパの小国「アイルランド」です。

第2回 アイルランド
    「ケルテック・スパイラル〜ケルト民族の転生輪廻観」
  記者:H.K
■アイルランドで何を思い浮かべるか?
アイルランドという地名を聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか?
多くの方はおそらくピンとこないと思う。せいぜいイギリスの隣にある島国としか思い浮かばないのではないか。
確かに、他のヨーロパの国々と比べると少々地味である観は否めない。
日本からダブリンへの飛行機の直行便もなく、ロンドン等で乗り換える必要があり、観光地としてもあまりポピュラーな場所とはいえない。
しかし、この小さな島国は、数多くのノーベル文学賞作家や、U2、そして次にご紹介するエンヤといった世界的なアーティストを生み出している。
また、ユネスコ世界遺産として認定されているボーイン渓谷の古代遺跡群(1991年認定)、スケリッグ・マイケル(1996年認定)といった、どちらも石像の世界遺産を残している。ケルト民族の残したといわれるこの石像に刻まれた模様は何を物語っているのか。


■悪魔も吹き飛ぶ天使の歌声「エンヤ」
エンヤというアイルランド生まれのミュージシャンをご存じだろうか。
音楽ファンの方であればこの音楽界のビッグネームをまず知らない方はいないと思う。
現在、「ペイント・オブ・ザ・スカイ」という初のベストアルバムも絶賛発売中で、このTVコマーシャルで彼女の名前を聞いた方もいると思う。彼女の名前を知らなくても古くからCM等のBGMで彼女の甘美なメロディーと美しい歌声を気付かずに耳にしている方も多いと思う。


1988年、彼女のリリースしたアルバム「ウォーターマーク」からシングルカットされた「オリノコ・フロー」はイギリス、アメリカはもとより全世界で大ヒットし、世界のヒットチャートの1位を総なめにした。アルバムも800万枚をセールスし「エンヤ」の名を世界に知らしめる事となった。
91年には、おそらくこの甘美で美しくどこか懐かしい名曲「カリビアンブルー」のバンドルされたアルバム「シェパードムーン」は何と1000万枚を超えるスーパーヒットとなり、アメリカのビルボード誌のアルバムチャートに199週間ランクインするという大記録を樹立した。もちろんこの年、音楽界最高の栄誉、米グラミー賞の栄冠に輝いている。「シェパードムーン」は彼女自身の代表作となるどころか、音楽史を代表する名アルバムとなった。

過去わずか4枚のアルバムの合計がなんと2700万枚!を超えるセールスを記録しているという。エンヤは押しも押されぬ世界のスーパーアーティストなのである。日本ではアムロ、コムロ、グレイも景気良く売れているそうだが、こちらは国際的な認知度が違うのだ。

賛美歌のようで牧歌のよう。アイルランドケルト民族の血が流れるエンヤの作り出すミュージックは「ヒーリング・ミュージック」とも言われている。
当時、ロックミュージック、ダンスミュージックが全盛の時代に、このような甘ったるく眠くなるような彼女の音楽が売れるのか?おそらく音楽関係者はもとより、誰もが思ったに違いない。おおかたの予想を裏切り、エンヤの曲は売れたのである。アメリカ、ヨーロッパ、アジアの国という国々まで、世界中のリスナーに受け入れられ幅広い層のファンを生み、売れに売れまくり、そして今でも売れている。

彼女の音楽の特徴は、既存の音楽のジャンルの型を超えたスタイルと(ロック、ボーカル、フュージョン、宗教音楽といったカテゴリに分類できない!?)、ある特定の国や地域、世代のみにうけていると言うことではなく、世界中の人々、多くの世代に幅広く受け入れられていることである。
なぜエンヤの音楽はこんなに多くの人々に支持され、これほど売れるのだろうか。


■エンヤの音宇宙
本名、エンヤ・ニ・ブレナン。1962年アイルランド北西のドニゴール州生まれ。このドニゴールという州は今でもゲール語が使われる地方で、ケルト文化の風習が根強くのっこている土地だという。
18才の時に姉とともにフォークグループ「クラナド」を結成し、キーボード奏者として活躍するも2年で脱退。
その後、シンセサイザー多重録音の手法による音楽づくりに取り組みはじめる。
1985年映画のサウンドトラックを担当し,BBCテレビのドキュメンタリーの音楽担当となり、1987年アルバム「ケルツ」 を発表する。
音のすべてをシンセサイザーにより彼女が作りだす。それを幾重にも多重録音を繰り返し、完璧な音楽を作り出す。インスピレーションが降りるまで、何時間でも何日でもひたすら待ち、妥協のない音楽に対する姿勢から彼女の音宇宙ができあがる。彼女自身もギリシャ彫刻から抜け出したようなとても美しい女性だが、彼女の生み出す音楽はそれ以上に美しくそして優しい。

彼女の元に、今日も世界中の人たちからファンレターが届く。
龍村仁監督映画「地球交響曲−ガイアシンフォニー」の中で出演したエンヤはこのように語る。
「私の曲の中には、ゲール語で歌ったものがたくさんあります。それを聞いた世界中の人々が、意味は分からないのに、これはきっと私の魂の遠い遠い記憶を歌っているのだろう、と手紙を書いてくれます。言葉の意味を超えた何かが、人々の心に伝わっているのです。これは本当にすばらしいことだと私は思います。」


■ケルテック・スパイラルの秘密
アイルランドの石像に刻まれた渦巻き模様(ケルテック・スパイラル、ケルチック・スパイラルともいう)は、アイルランド史上の貴重な歴史的遺産といわれている。ケルト民族のシンボルともいわれ、装飾品、アクセサリなどにも今でもよくこのようなデザインが使われている。
多くの歴史学者、宗教学者などが「永遠性を示すシンボル」「転生する生命の姿を描き出しているのではないか・・」このような憶測でこの模様を説明している。
この物言わぬ渦巻き模様は生命の永遠を現す「転生輪廻」のシンボルなのだろうか。

その問いにエンヤははっきりと”YES”と答えている。
「そのとおりだと思います。渦巻きの中に引き込まれて、永遠の中に連れて行かれるような気がします。」

このホームページをご覧の皆様の中で、どれだけの方が転生輪廻観を信じているだろうか。
キリスト教系の思想をお持ちの方はなかなかこの考えを受け入れる事は難しいと聞いている。バカバカしくて考える気にもならないと、お嘆きになる貴兄もおらっしゃるかもしれない。
しかし、どうだろうか。このエンヤの曲を聴いているときだけは、メルヘンチックな思いを寄せてはいかがだろうか。あの世はあるのかないのか、人は生まれ変わるのか、などと眉間にしわを寄せて哲学者ぶって考えるのではなく、もっと明るくメルヘンの世界に足を踏み入れていくような思いを持ってみては。

自分はいつの時代に生きていたのか、どんなことをしていたのか。どのような人を愛していたか。過去における自分の愛の記憶の中で、中世のヨーロッパを思い浮かべるもよし、繁栄期の中国に思いを馳せるもよし、トルコ、エジプト、ギリシャやローマ、日本の江戸時代でも良かろう。
もしかすると、あなたの伴侶も昔も同じようにあなたの伴侶であったかもしれない。自分の友人、知人たちもあるいは過去にお世話になった方かもしれない。民族や文化、宗教の壁を通り超え障壁となっていた”境界線”が無いことを、あるいは宇宙飛行士のように認識できるだろうか。
人生一度きりで、死んでしまったら何も残らず、ハイそれまでよ、なんて人生はむなしく悲しすぎると思えてこないだろうか。
ケルテック・スパイラルが物語るような果てしない生き通しの人生の中に、「永遠」への思いを馳せた方が幸せで喜びにあふれる人生を歩めるのではないか。そのような思いを抱かせる魅力がこの音の宇宙を漂う中で味わえたなら。
とにかく難しいことは抜きにして、美しく甘いメロディーとどこまでも遠く透き通るような歌声に身を委ねてみることをお薦めしたい。
もしかすると「あなたと同じ時代に生まれて良かった。ほんとうによかった。」と熱い思いがこみ上げてくるかもしれない。
おそらくエンヤの元に届く世界の同胞からの手紙にはこのような感謝の言葉も添えられているに違いないから。


最後に、このホームページをご覧いただいている方へ。
「同じ地球の上で、同じ時代にこの原稿をご覧いただいてどうもありがとうございます。あなたにご覧いただいてよかった。本当によかった。」


次回(2/15号)は、タイ、バンコク「クルン・テープ〜天使の都」の予定です。



ワールド・スピリット バックナンバー] [ホームページへ戻る]