■シリーズ「ワールド・スピリット」 世界の文化を訪ねて

今や子供達の遊びの主流はTVゲームですが、私たちの子供の頃は、「プラモデル」が全盛でした。作った物はMM(ミリタリーミニチュア)シリーズ、中でもドイツ軍の戦車が人気でした。

第25回 ドイツ特集
「戦車でみた世界大戦」 前編
〜プラモデルで学んだ戦争史〜

 記者:黒岩宏光


■田宮模型1/35シリーズ

田宮模型の1/35ミリタリーミニチュアシリーズは当時(20年ほど前)大ヒットしたプラモデルシリーズで、戦車や装甲車、同じく1/35の歩兵部隊シリーズの人形などと合わせ大変人気だった(もちろん今でも発売されている)。中でも、ドイツ軍戦車はその格好良さから一番人気で、パンサー、タイガー戦車を中心に、モーターライズ(モーター駆動)のあるなしに関わらず、当時の子供達であれば一度は手にしたことがある品ではないかと思われる。

さて、この発売元の田宮模型という会社であるが、当時の子供のレベルとしても、世の中のことなど右も左も理解できないハナタレ小僧の分際であっても、

「タミヤのプラモデルは質がいい」

とはっきり理解できるほど、実によくできていた。白地に精密なテクニカルイラストの箱絵、嘘のない忠実で正確な組み立て図、時代考証と歴史的背景を説明した解説文、そして赤と青の二つ星のロゴマークは、子供相手であっても期待を裏切ることのない、安心と信頼のマークとして広く子供達に親しまれた。

今やこの田宮模型のロゴマークは、アジアでもヨーロッパ、アメリカでも世界中どこのホビーショップでも必ず目にすることが出来る。


■一番人気はドイツ軍

さて、このミリタリーミニチュアシリーズの中で、特に人気の高いものはやはり、ドイツ軍のシリーズである。
ドイツV、W号戦車、パンサー中型戦車、タイガーT型重戦車、キングタイガー重戦車、駆逐戦車ハンティングタイガー、ロンメル(ヤークトパンサー)、などの人気の高い戦車シリーズから、水陸両用車シュビームワーゲン、キューベルワーゲン、ハノマーク兵員輸送車、8トンハーフトラック4連高射砲、対戦車自走砲マーダー、88mm対戦車砲、20mm対空機関砲、といったマニアックな車両や兵器から、ミニチュアシリーズ最大の人気の要因であるところの、ドイツ軍歩兵セット、機関銃チームセット、戦車兵セット、将校セットといった人形までをラインナップとして提供し、このバラエティの豊富さもドイツ軍人気の要素となった。

この歩兵セットといったシリーズであるが、戦車などの1/35スケールにあわせ縮尺された兵隊人形のセットであり、これに色を塗り、顔の表情までを描き、戦車などに配置し、荒原や市街地といった情景までを作成し、思い思いの戦場ジオラマを作り出すといった遊び方が当時模型ファンの間で流行ったのである。

もちろん戦車などにも色を塗るわけだが、丁寧に色を塗るのではなく、戦争下のリアリティを出すためにキャタピラの泥汚れをそれ風に再現して着色したり、塗装の剥げやサビなどの金属の質感を出したり、はたまた、わざとプラスチックを熱などで変形し、攻撃を受けた跡や損傷を施すなど、その想像力はメーカーの思惑を越えた遊び方を模型ファンは想像し、そして、これらの情景を写真に収め、情景集なる写真集も刊行されるなどの人気ぶりなのであった。


■戦車で見る戦争史

田宮模型の品質の高さははじめにも述べ、そして一端の模型ファンであれば周知の事実なのであるが、プラモデルの品質や内容と関係ない部分においても、多くの田宮ファンを生み出したとされる要因がいくつかある。

昭和42年から開始された「タミヤニュース」という模型ファンに向けた月1回の雑誌の発行などもその一つである。田宮俊作社長自らのメッセージや全国の模型ファンの紹介、戦車の歴史やミリタリーミニチュアシリーズの情景写真などを載せ、多くの模型ファンに親しまれることとなった。

また、先程も少しお話ししたが、プラモデルに添付される組立説明図の緻密さや親切度といった点もあるが、そしてもう一つ、特筆されるのは、その戦車なりが登場した時代背景や当時の状況などを、子供でもその情景をありありと描き出せるように、ドラマチックに書かれた 解説文 が必ず記載されていたことを高く評価したい。

これにより、作る楽しさに立体的な空間が生み出され、戦車などのプラモデルを通じ、戦争という体験し得ない歴史の一ページを知り、戦争史や当時の世界情勢などを学ぶきっかけを子供達に与えたのである。

付録編ではドイツ軍戦車の歴史を簡単に振り返り、プラモデルから学んだ戦車の歴史という角度から見たドイツ第三帝国の戦車開発に賭けた、恐るべき執念をまとめてみたので、ご興味のある方は見てほしい。

さて、後編はドイツ軍とは関係ないが、このミリタリーシリーズの生みの親、田宮俊作氏の書かれた「田宮模型の仕事」という本を皆様にご紹介したい。


「戦車で見た世界大戦」 後編 〜田宮模型の仕事〜 に続く






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