■シリーズ「ワールド・スピリット」 番外グルメ編

海外を旅行することの楽しみの一つに、その国、その土地での料理を味わうという楽しみがある。
私たちの住む日本ではとても食べられないような食材や料理を、日本とは違った環境の中で堪能することはとても大きな楽しみの一つである。
とは言っても、所変わればそこに住む人たちの食文化や味覚も当然異なり、私たち日本人の味覚にそのままストレートに受け入れられる味というものは多くはない。
必然的に食するものにとってパラダイムシフト(価値の転換)が要求されることになる。
このパラダイムシフトによって、その国の食を受け入れることは、そのままその国の文化を理解し受け入れることにつながると私は思っている。食文化を受け入れること、これはその国を理解し受け入れることの一番の近道であり、友好への第一歩であることと信じて疑わない。



番外グルメ編 「食文化で学ぶ世界平和」  記者:H.K
■食文化大国イタリア
世界の国々でグルメ大国といえば、フランスや中華料理の中国を忘れることはできないが、私は「イタリア」がNo1だと思っている。
イタリアの国旗の緑はオリーブの葉、白はニンニク、赤はトマトと言われているぐらい、イタリア人の食へのこだわりは、古代ローマ帝国時代から一種の伝統のように受け継がれている。
パスタ、ピザ、その他オリーブオイルやトマトソース、チーズ、魚介類をふんだんに使用したイタリアの食文化は日本のみならず、世界の国々で愛され、受け入れられている。
イタリアの肥沃な大地で収穫された葡萄にて作られるワインも、世界の総生産の30%近くを占め、世界一の名産地としても有名である。

食環境も日本とは異なり、日本では当然夕食が一家団欒の時間となり、一日の中で夕食に重点を置いた食生活になるが、彼らイタリアンは昼食に一番ウエイトを置き、一日の中で一番手間と時間をかけ食事を楽しむ。所が変われば味のみならずそれを取り巻く環境までもが違う。


■マレーシア料理「ラクサ」と天の恵みココナッツ
その他、エスニック料理も昨今人気で、ベトナム料理なども注目されているが、中でも有名なのはやはり「タイ」料理であろう。
名物トム・ヤム・クンをはじめ、唐辛子を多用した辛口の料理は独特な味わいがある。
タイをはじめとする東南アジア圏内の多くの国は赤道に近く、一年中たいへん暑い日が続く国が多い。やはりこのような暑い環境の中においては、唐辛子などの辛い食材で胃を刺激し、食欲を活性させる必要があるのだろう。そうでないと、日本でいう夏バテのように一年中バテてへろへろな状態でいなければならない。

このタイ料理であるが、レモングラス、パクチーといった日本にはない香草を多用していることもあり、初めて食する方にとっては抵抗がある場合もある。日本ではダシとして、鰹、昆布などが使用されるが、ここタイではダシとして「ココナッツ」が多く使われ、この辺の味覚の違いでタイ料理を敬遠されてしまう方も多い。
スープ類、タイカレーなどにも主にこのココナッツがダシとして使用されるが、初めて食する時にはやはり何方も奇妙な味に思われるに違いない。日本料理にココナッツがダシに使われるなどと言うことは絶対にあり得ないし、考えただけでも奇怪な取り合わせである。

マレーシア料理の中に「ラクサ」という、日本でいう「ラーメン」か「うどん」に値するヌードル系の料理があるのだが、これもダシにはふんだんにココナッツが使われている。
私がマレーシアに在住したときもこの「ラクサ」にはたいへんお世話になった。初めはやはりココナッツのダシには到底受け入れられる素地など無かったのだが、そのコクと南国特有の甘い味覚、そしてココナッツは彼らにとって食のベースとなる大事な天の恵みであること(イタリアでの味のベースとなるトマトソースのトマト、日本でいうところの豆腐、味噌、しょうゆなどの材料になる大豆に値するだろうか)を知り受け入れたときに、「ラクサ」は自分にとって彼らの文化を理解する上でも大事な食べ物になった。

自分たちの感覚、習慣にこだわってしまい「とても信じられない!」などと言っていたのではとても相手の食はおろか文化そのものまでも受け入れることなどできない。


■人を見抜く天才「松下幸之助」翁
故、松下幸之助翁が初期の松下電器の社員採用面接の際、自ら面接官を担当された時のエピソードとして、必ず質問事項としていた項目があるそうである。

「あなたは食べ物に好き嫌いがありますか?」

このことは一見社員面接と何ら関係のない事柄に思えるかも知れない。しかしながら、翁曰く「食べ物の好き嫌い、即ち、人間の好き嫌いと同じである」といえることであるらしい。
「わたしはピーマンがどうしても好きになれません」
「私は魚の生臭さが嫌いで、魚は食べられません」
「私は誰それさんが好きになれません(誰それさんの良いところを見つけることができません)」
「同じ課の○×さんのこういうところが嫌いで、だから好きになれません(○×さんを理解し、協力していこうとする努力や工夫が私はできません)」

このようなことであろうと、人を見抜く天才は物語っている。


■ウナギと価値の転換
 日本料理の中で「鰻」は大変なご馳走として食文化に根付いている。
しかし、このウナギをただ単にさばいてフライパンで焼き、塩をふって食べられるかというと、肉はグニャグニャし、小骨が口中に突き刺さり、とても食べられた物ではない。
蒸して肉骨を柔らかくし、その後直火で丹念に焼き、そしてあの芳醇な醤油をベースとしたタレを付けてさらに焼き、香ばしさを醸し、初めてウナギの蒲焼きが生まれる。
誰がこの調理法を考えたかは知らないが、ウナギの特長を生かしたすばらしい調理法である。この調理法がなかったら、ウナギはここまでご馳走として崇められることは無かったに違いなく、ただのニュルニュルとした気持ちの悪い生き物としか扱われることは無かったと思う。
食べ物によっては、煮ようが焼こうがどのような料理方法でも美味しくいただける万能な食材もあれば、このウナギのように特別な料理法でなければ持ち味を生かせない食材もある。
物の考え方、価値の変換、そして知恵、使い方や方法によって思ってもいなかった効果が現れる。このことは、人間関係、他民族との関わり合いにおいても同じであろうか。


幸福なことに私たちは、自分自らの知恵で、価値の転換(パラダイムシフト)を起こすことができる。
相手を変えるのではなく自分が見ている世界観を変えることができるのである。
世界の色々な食べ物や料理は、食(受け入れる)という行動を通じ、その在り方を私たちに教える。

今や世界のどの観光地でも日本料理が食べられるような環境にあるが、あなたももし海外にご旅行の際は、是非その国の名物料理、郷土料理などを積極的に試してみることをお薦めする。その土地で豊かに実る食材に感謝しその国の文化に敬意を表しながら味わおう。その味を受け入れることができたなら、あなたはとても大きな幸福に包まれるに違いない。あなたはその時点で人生における成功者として大切な宝を手に入れる。


 今日も、天の恵みであるところの豊かな食料を与えられていることに感謝し、ありがたく今日一日の食事を美味しくいただきましょう。


次回のワールド・スピリットはW杯編「地球が熱い!W杯」の予定です。




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