■シリーズ「ワールド・スピリット」 世界の文化を訪ねて

たまに、デジャビュー(既視感)といわれる経験をされる方も多いと思います。
さて、このモン・サン・ミッシェルをご覧になったことがある方で、私と同じような経験をされた方が多いのでは?と思っているのですが・・・。


第7回 フランス
「モン・サン・ミッシェル〜大天使ミカエルの啓示」   記者:黒岩宏光


■大天使ミカエルからの啓示
パリから西に約400キロ。神秘の要塞「モン・サン・ミッシェル」までは日本語ガイドツアーのバスもパリから就航している。

モン(Mont)は山、サン・ミッシェル(St−Michel)は聖ミカエル。

7世紀にオベール司教は夢の中で大天使ミカエルから、「この山頂に大天使を奉る教会を建造せよ」−との啓示をいただき、その後幾世紀の長きに渡り建築、増改築が繰り返され、「神秘の要塞」とも言われるような現在の形の修道院が建設された。

事実、14世紀の百年戦争と言われる時期にこの修道院は、城壁や塔などが建てられ、イギリス軍の猛攻撃にも耐え、「難攻不落の要塞」として機能したのである。要塞のような佇まいの理由が納得できる。

ここは、山全体が一つの小さな町なっており(ホテルも数件ある)、その真ん中にこの修道院がそびえている風景も特異な風景であるが、さらに特異な現象が加わっている。ご存じの方も多いと思われるが、海上のピラミッドの如しに、周りを海(砂浜)で囲まれ、世にも珍しい独特な景観として存在している。(今でこそ陸地と堤防でつながれ、沖合に作られた堤防によって、満潮時でも孤島となることはない)

この付近一帯は潮の干満の差が激しく、満潮時では猛スピードで潮が満ちてくることで知られている。可哀想な話だが、その昔、ここを訪れる巡礼者の多くが、その猛スピードな満ち潮の被害によって殉職された方も、ここの特異なる背景の歴史の中でいるそうである。


■大いなる啓示?
実際に目にすると、奇怪というか神秘的な光景である。
印象としては、何か突然山が地響きとともに動き出し、突如空に浮かんでも何ら違和感がないような感じがする。当然そんなことがあったら腰を抜かしてびっくりするだろうが、ここでそのようなことがあっても別に不思議なことではないような、それほど神秘的な印象である。

「よく作ったな〜」
あちこちから日本人観光客のカメラの音と、感嘆の声が聞こえる。
確かに、そのとおり。

「!?」

しばし、この光景を眺めていると、何かいつか見たことのあるような、なにか懐かしいような、既視感に似た感覚を突如感じた。
ここは初めて訪れた場所であるし、別段懐かしさを感じるようなところではない。いや、しかし何かを感じるのである。

「何だろう・・・。」

暫し思いを巡らせた。なにかの啓示だろうか。インスピレーションだろうか。過去世であるとか、時空間を越えるような、何か新しい学びがあるのだろうか。この神秘的な光景の目の当たりにしているのである。直感的に何か精神的なインスピレーションを確信したのである。
「あっ!」 と何かひらめいた瞬間、目の前のモン・サン・ミッシェルが空に飛び上がった!!と思ったら、自分が後ろに倒れて、尻餅をついただけだった。

「痛ってぇぇぇ〜・・・」

目の前のモン・サン・ミッシェルの写真を撮ろうとカメラを構え後ずさりしてきた巨体のおっさんが、物思いに耽っていた僕に真横からぶつかったのだった。
「ディスクールペメ、アッミーゴ」

げぇっ、また、スペイン人らしい。ベネッツィアではひどい目にあったが、このおやじも口髭をはやし、マリオブラザースみいだ。それに、このおっさんにアミーゴ(友達)といわれる筋合いはない。

おかげで、大事なことが思い浮かんだと思ったがすっかり霧散してしまった。
これは一大事である。自分とそしてこのコーナーの読者の方々のために、人生をよりよく生きるための学びとヒントを提示できると思われる絶好のチャンスを、スペインのマリオおやじのおかげで逃してしまいそうだ。

「う〜ん・・・!?」 今一度、スペインのおやじがぶつかってくる前の一瞬のひらめきを思い返そうとしたが、思い浮かばない。必死で霧散しそうな記憶を手繰り寄せるが、焦れば焦るほど記憶が薄れていき、ここの潮の満ち引きのような猛スピードで、前の干上がった砂浜を見るが如しに、うすら寂しく記憶から消えてしまった。
何かの光景であったか、何かの記憶であったか、いったい何であったか、とても大事な記憶であるらしいことは何となく理解できるのだが、それだけに焦りが先に出てしまって思うようにいかない。

ここは落ち着いて冷静に思い返して見よう。まずは、モン・サン・ミッシェルを見たことから始まったのである。

「モン・サン・ミッシェル」→「奇怪な光景を見た」→「奇怪な絵」→「サルバトール・ダリ」→「スペイン人」→スペイン人のおやじ!?・・・ ではない!!どうもスペイン人のおっさんの印象が頭から離れられないでいる。う〜ん、困った。

「モン・サン・ミッシェル」→「長年の建築期間」→「サクラダ・ファミリア(聖家族教会)」→「バルセロナ」→「スペイン」→スペイン人のおやじ・・・・ 

「・・・・・・・・・」


■オムレツを焼くおばちゃん
同行した日本人の観光客の方々は、もう先に島内の観光に行ってしまった。
私だけ遅れて考えながら、ゆっくりと歩くことにした。なんとしても思い出したい。

細い参道(Grande rue)の左右にはいろいろなおみやげ屋が立ち並び、端臭い感じである。ここはなぜかオムレツが名物とのことで、すでに日本人がオムレツ屋の前に並んでいる。
食べてみたい気がするが、それどころではない。オムレツのおいしそうな匂いも今は何とも感じない。
静かに、ゆっくりと,景色を見ながら思いを巡らせば、もしもあのとき一瞬頭に浮かんだ内容が何かの啓示のようなものであれば、この土地に関係した内容であれば、きっと思い出すはずである。

卵を溶き、鉄板でオムレツを焼くおばちゃん。この風景、この光景、ますます、何か見覚えがあるような感じがするのだが・・・思い出せそうで思い出せない。


■思い出した!
結局、モン・サン・ミッシェルを見学している最中は2度と再び思い出すことはなかった。
今回のレポートで読者の皆様に何か、今までにない新しい発見と学びを提供できると思っていたのだが、残念である。

「スペイン人には気を付けよう」という程度のオチで結びにするしかないだろうな・・・いや、これでは読者の皆様は納得してくれるはずはないし・・・などと関係ないことを帰りのバスの中で考えていたところ、ふと鮮やかに、なにかの景色が眼前に浮かび上がった。

「あっ、これだ!この景色!」


「 江 ノ 島 」 !?


私の目の前には、数年前に海水浴で出かけた、神奈川の江ノ島の風景が色鮮やかに浮かんでいる。江ノ島に向かう一本の道路、にぎわう海水浴客、道ばたに並ぶオムレツではなく、たこ焼きや、お好み焼きの屋台・・・

かつて見た、この江ノ島での光景が、モン・サン・ミッシェルでの風景と非常に似ていたのである。「どこかで見た・・・」となることも当然であり、既視感というか既視そのものである。過去世とか大いなる啓示とか何の関係もないような気がする。いや、何の関係もない。(^^;)

「・・・・・・・・」


こんなどうでもいいことを思い出すためにフランスでの貴重な一日を費やしてしまった。
(しかし、こんな、しょーもないレポートになってしまっていいんだろうか・・・。ナポリミラノに比べればマシか)


参考:TBS「世界遺産」 「モン・サン・ミッシェルとその湾」 のページ


次回は、音楽の都オーストリア(予定)です。





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