■シリーズ「ワールド・スピリット」 世界の文化を訪ねて

好評第3回目はアジアの最大の観光地、敬虔な仏教文化の都、タイ−バンコクです。
前回が音楽情報誌のような内容になってしまったので、今回はタイの観光案内のようなつもりでお届けいたします。

第3回 タイ、バンコク「クルン・テープ〜天使の都」  記者:H.K


■仏教文化の都
 私はタイ、バンコクという所が好きである。好きな理由はいろいろあるが、まとめると以下のようになる。
  1. 日本から近く、時差がほとんどない。直行便も多く旅費も安い。
  2. ホテルがすばらしい。
  3. 観光名所が多い。
  4. タイ料理が美味しい。
  5. そして、2のホテルがすばらしいの項目に通ずるのだが、仏教国として国民が仏陀を愛している。ということを最後のポイントとして挙げたい。

■アジア最大の観光地
とにかくこの地は、観光には事欠かない。王宮や有名なワット・ブラケオ(エメラルド寺院)、三島由紀夫の小説で有名になったワット・アルン(暁の寺)、市内を隆々と流れるチャオプラヤ川、バンコクの市内を見るだけでも十分に異国情緒を堪能できる。
ワット・ブラケオの金色に輝く仏塔は、私たち日本の仏教建築とは異なり、同じ仏教でもその文化の違いを実感できる。
「仏舎利」が納められているといわれる寺院内の仏塔(プラ・スィー・ラタナ・チェデイ)は塔全体が黄金色に塗られ、陽光に照らされるとまばゆく輝き、タイの仏教文化に彩りを添え、人々の仏を崇高する信仰心の意気込みを感じることができる。まばゆく輝くと言えばポケモンのピカチューだが、こちらは子供たちを卒倒させてしまってはいけない。
涅槃寺(ワット・ポー)の48mにおよぶ巨大な涅槃仏像も有名で、どの寺も建造物も仏像もたいへんに見ごたえがある。バンコクはお釈迦様一色の町であり、仏教ファンにはたいへんに魅力のある場所である。


バンコクから少し足を延ばせば、世界遺産にも認定されている「アユタヤの古代遺跡群」等の歴史的遺産も見学できる。また、タイにはアジアでバリ島に次ぐ人気を誇るマリンリゾート「プーケット島」も擁する。バンコクでの社会見学のあとはこのプーケット島に飛び、ヤシの木陰で南の海を満喫するという楽しみもできる。
しかし、私のお薦めは何といってもナムサン・サドゥアクの水上マーケット見学である。これを見ずしてタイを語れないというぐらいこの国の風物詩であり、東南アジア的異国情緒を堪能できる。「東洋のベニス」といわれる張り巡らされた運河に、小舟に果物等を乗せたおばちゃん(お姉さんもいる)が、川の上を市場と化しているその光景はたいへんにおもしろく感動に値する。中には小舟の上でバナナの天ぷらを揚げてご商売をなさっているおばちゃんもいる。
転覆しそうになったら大やけどするんだろうななどと老婆心ながらに風景を楽しめる。

その他、タイ像のショーが楽しめる「ローズガーデン」、格闘技ファンには最強の格闘技といわれるタイ式キックボクシング「ムエタイ」、タイ古典舞踏なども観光客に人気で、エンターテイメントに関しても見所がたくさんある。
タイ料理もなかなかいい味で、特に世界3大スープといわれる本場の「トムヤム・クン」は、今では日本でもポピュラーになってきたが、思いっきり辛いが味は絶品である。その他日本では味わえないハーブを多用したタイ料理はグルメの舌も満足させる。


■ホテル・オリエンタル・バンコク
さて、食の次は住である。
バンコクのホテルはサービス、ホスピタリティとも世界のホテルの中でもトップレベルといわれている。
中でも、世界最高のホテルといわれるホテルの名をご存じだろうか。
そのホテルは、ヨーロッパにも米国にあるのでもなく、このバンコクにあるのである。米雑誌「インベスター」誌の発表する世界のホテルランキング(年間65泊以上世界各地のホテルに宿泊するグランドツアラー(いったいどんな連中なんだ!)の投票によって毎年決定される)にて過去10回連続して1位の座に輝き、英国「ビジネストラベラー」誌の選ぶ世界ホテルランクでもベストテン常連という名実共に世界No1ホテルと言われている。
その名も知る人ぞ知る「ザ・オリエンタル・バンコク」という。
同じチャオプラヤ川沿いに立つ「シャングリラホテル」やサイアム・スクエアに位置する「リージェント・バンコク」などもランキングの上位に顔を覗かせるが、創業以来120年に渡り世界中の大統領クラスや数々のVIPをもてなしてきたオリエンタルの伝統と誇りの前には一歩も二歩も譲らなければいけないだろう。

この「ザ・オリエンタル・バンコク」を頂点として、高級から中級、バックパッカーが利用するような安宿まで含めて、バンコクにはたくさんのホテルがある。このバックパッカー(インド、デリーへの直行便格安チケットがバンコクで入手、利用できるためインドへ向かう、このバックパッカーといわれる旅行者が多い)の方々が利用する宿は別として、バンコクのホテルはとてもサービスがいい。
とは言っても、今やどこの国のホテルでも一定水準以上のサービスは請けられるし、その質も高くなってきている。しかし、このバンコクでのホテルでの印象はとてもいいのである。なぜかというと、この国は仏教国であるからに他ならない。


■徳を積む行為−顔施(与える愛)
この国の宗教はもちろん仏教である。法律では宗教の自由が認められているが、国民の95%が仏教者であり、事実上の国教である。日本で言われている仏教とは少し違い、タイの仏教は上座部仏教(小乗仏教)といわれている。この教えの特徴は、戒律が非常に厳しいのが有名である。

合掌礼のスタイルをタイでは”ワイ”と呼ぶ。ワイは相手に敬意を表す一連の行為である。そして、仏の慈悲である与えることの愛。その入り口にあるのが”顔施”といわれる顔での施し、即ち”笑顔”である。タイの人々はいつもこの笑顔にあふれている。彼らの日常生活のごく自然な一部として、もう体の当たり前の機能として染みついているのだ。忘れていたがタイは「微笑みの国」としても知られているのである。

なぜ彼らは微笑むのか。タイに関する文献を読んでみると、そのような単純な理由までは書かれていない。しかし、これは明らかに先ほども書いたが仏教精神に基づく、与える愛の実践を行っているからに他ならない。
タイは厳しい身分社会である。身分社会の善し悪しの問題は別として、このことはどうしても来世観としての徳積みの習慣に結びついている。徳を積むことによって来世は高い身分にて生まれたいといったような考え方である。このような背景から多くの人たちは転生輪廻観を信じている。

バンコクの市内でも柿色の布を体に巻き付けた僧侶たちが托鉢を行っている姿を目にする。この大都市でこのような原始的な風習が見られるのもこの町の魅力でもあるが、早朝などには、普通のサラリーマンや主婦などが食料品などを布施する風景も見ることができる。”タンプン”呼ぶそうであるが、これは僧侶側が物乞いをしてるのではなく、布施する側の徳積みの儀式であるそうだ。僧侶側は毅然として受け取り、差し出す側は”ワイ”にて布施を行う。

このように、徳を積む行為が習慣として日常に根付いている。その、最も基本的な行為として「微えみ」があるのだ。 この国の人々のように自然に出る笑顔と仕事上ビジネスの一環として行っている笑顔ではその質が全然違うということは、この国のホテルに泊まるとよく分かる。
だからバンコクのホテルは評判がいいのである。オリエンタルをはじめとする高級ホテルのサービスの神髄は与える愛を教える彼らの仏教の精神によるものである。
天国の門をくぐるには笑顔が無くては通ることができないという。天国といえば天使。そんな理由で、この国は「クルンテープ(天使の都)」とも称される。

とかく日本人は能面のように表情が乏しいと言われる。乏しいだけならいいが、仏頂面や不機嫌な顔をしている人が多いような気がする。何かとストレスの多い現代ではあるが、この与える愛である「顔施」の精神は大いに見習いたい。


次回(3/1号)は、マレーシア「クアラルンプル〜アジアの理想郷」の予定です。お楽しみに。



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