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私たちの生活に「車」は欠かすことができません。 どこかへ行くにも、荷物を運ぶにも、なくてはならない道具の一つでしょう。 しかし、ここにはそんなものはありません。 あるのは、優雅なる「ゴンドラ」だけです。 余談ですが、「飲んだら乗るな」の交通標語は車だけでなくゴンドラでも当てはまります。 |
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■ゴンドラに揺られて
「は〜、のどかだね〜ぇ・・・」(ちびまる子ちゃん風に)ここに来たら何はなくても「ゴンドラ」にまず乗ろう。 船頭さんは、船をこぎながらイタリア民謡を大声で歌ってくれる。 「サァンタァ〜ル〜チィィアァァ サンタ〜ルチィア」 「オォ〜ソォ〜レミ〜ヨ〜」 これは子守歌みたいでとてもうれしい。イタリア民謡を聴くと、イタリアに来ているぞという実感が猛然とわき上がってくる。 狭い網の目のような運河を船頭さんが上手に漕わたっていく。所々、脇の民家の壁に足でキックして進路を取る。 「お、お見事・・・(^^;)」 観光客の乗るゴンドラのデザインも素敵だ。「ボート」ではなく、あくまでも「ゴンドラ」なのだ。観光地の湖などにある「ボート」とは違うのである。ここにあるのは「ゴンドラ」なのである。 周りを見渡すと、アベックが多いぞ! う〜ん、当たり前か。 ゴンドラに同席しているスペイン人らしきおっさんがなにやら話しかけてくる。ご夫婦でイタリア旅行をお楽しみらしい。スペイン語はなんだかよくわからず(英語もよくわからないが)、赤く酔っぱらった顔をして紙コップとワインを渡してきた。 「そこの日本人の若けーの、まあ一杯やんな」とでも言っているのだろうか。 日本では今はお正月の最中だし、せっかくなのでいただくことにした。ぐびっと景気よくやると、「アミ〜ゴ!アミ〜ゴ!」と言いながらまた注いでくる。巨漢のマリオ・ブラザースみたいな風貌の人なつっこいおっさんである。 どうでもいいけど他の乗客や船頭さんにまで酒をすすめている。 ■サンマルコ広場 ここベネツィアの「サンマルコ広場」は私がいろいろと旅をした中で、もっともすばらしいと思う景観の一つである。目の前のサンマルコ寺院は、聖マルコ(ちびまる子ではない)の遺骨を納めるために11世紀に建設された寺院である。ロマネスク、ゴシックなどの複合様式が融合した外見も素晴らしいが、内部も素晴らしい。黄金色に統一されたアトリウムやクーポラには、システィナ礼拝堂に勝るとも劣らない見事な一大宗教絵画(アブラハム、モーセの物語など)が描かれている。 豪華絢爛の「ドッカーレ宮殿」などに囲まれ、この「サンマルコ広場」は世界各地からの観光客で賑わいを見せている。 ここは古き良き時代のイタリアをタイムスリップしたかのように味わうことができる。 他のイタリアの町並みと比べると何か足りないなと思ったら、ここには「車」がないのである。イタリアではどこに行ってもフィアット(ルパン3世が乗っているようなあの小型車)があちこちで走り回っているのだが、その姿がここにはない。車の代わりになる交通初段はもちろんゴンドラやボートである。迷路のような運河は道で、ここに住む人々や観光客は水の上を移動する。 地球上にこのような美しくも優雅でそして変わった都市があるなんて奇跡のようだ。地球に生まれてよかったと涙が出るほどうれしくなってくる。 水上のゴンドラから見る町並みは、さらに美しく優雅である。「アドリア海の女王」といわれたベネツィアのその昔の栄光を思わせる。まさに水上に現れた蜃気楼を見るような幻想的な美しさだ。ビスコンティの映画のように、マーラーの交響曲第5番アダージョットの美しいメロディーが浮かび、ハーブの甘美な音色が頭の中に聞こえてくる。 ■再びゴンドラに揺られすぎて ゴンドラに揺られ、ベネツィアの優雅さに包まれ、〜もし、このままあの世へ行ってしまっても、何の後悔もないだろうな〜と思うような恍惚感に浸っていた時、ドーン!という大きな音が聞こえたと思ったら、ゴンドラが左右に大きく揺れた。酔っぱらった船頭さんが誤ってゴンドラを欄干に激突させてしまったのだった。せっかくのいい気分は吹き飛び、額にだらっと斜線が入り(ちびまる子ちゃんみたいに)油汗が流れた。スペインのマリオ風おじさんはゴンドラの縁に座っていたため、バランスを崩し、ワインのボトルを放り投げたと思ったら、そのまま背中から勢いよく海に落っこちてしまった。 ドボーン!という轟音と水柱のようなしぶきが上がり、おっさんは叫び声をあげて、ばしゃばしゃと海の中でもがき溺れている。 た、た、たいへんだ。ここは、日本男児として、いや人として目の前の溺れている人を助けないわけにはいかない。私は素早く上着と靴を脱いで、海に飛び込んだ。おっさんがなにやら叫びながら、抱きついてきたが、重すぎて自分まで沈んでしまいそうだ。 「ひえ〜っつ、前言撤回、まだあの世へはいきたくないよ〜ん、ぐえっ〜つ」 ■地球温暖化による危機 ベネツィアは5世紀の頃、侵略から逃れてきた民族がここへ住み着き、他民族の侵略を受けないように潟(ラグーン)の上に町を築き上げた。地中海貿易、東方貿易で莫大な財をなし、16世紀に至るまでの長い間繁栄が続き、現在は観光地として生まれ変わり世界からの観光客を受け入れている。このようにこの地は、もともと潟のような湿地帯に杭を打ち、都市を築いてきたため地盤が軟弱であったり、地球温暖化の影響による海面の上昇が心配されている。大雨や洪水時にサンマルコ広場が海面に没している絵をニュースなどで何度か見たことがあるが、とても痛々しい。 このような美しい都市を何とかして守りたい。ベネツィアを訪れた人であるならば誰しもがそう願うに違いない。 地球上に出現したこの奇跡のような都市を「永遠」に残したい、この地にてゴンドラに揺られ、そしてこの海を泳いだことのあるものならば誰もがそう願い、この地のために祈りを捧げるに違いない。 次回は、イタリア4「ナポリ〜ナポリを見て死ねるか?」の予定です。 |
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