■シリーズ「ワールド・スピリット」 世界の文化を訪ねて

昨年末、日本の「日光の社寺」が世界遺産登録されました。
栃木県の皆様、おめでとうございます。これで日本の世界遺産登録は10件になりました。
さて、このうちの文化遺産8件中、5件に共通したことがありますが、それは一体何でしょうか。

第21回 番外世界遺産編
「世界遺産に見る建築文化」
 記者:黒岩宏光


■世界遺産

「世界遺産」とは1972年、パリで開かれたユネスコ総会において採択された国際条約のことで、正式には「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」と呼ばれる。

素晴らしい文化遺産や自然遺産を、国境を越えた人類共通の遺産(地球の遺産)として保護することが唱えられており、この条約に締結した158カ国が参加する世界遺産リストには2000年1月現在で630(文化遺産480、自然遺産128、複合遺産22)を数えている。

日本でも1998年12月に古都奈良の文化財、1999年12月に日光東照宮をはじめとする日光の社寺が世界遺産登録されるなどの盛り上がりを見せており、1996年よりTBS系で放送されているTV番組「世界遺産」も、毎回美しい映像により紹介してくれるその内容に、ファンも多いようである。

ちなみに日本の世界遺産は現在以下の10件である。

 1993年、法隆寺地域の仏教建造物
 1993年、姫路城
 1993年、屋久島(自然遺産)
 1993年、白神山地(自然遺産)
 1994年、京都の文化財
 1995年、白川郷・五箇山の合掌造り集落
 1996年、原爆ドーム
 1996年、厳島神社
 1998年、古都奈良の文化財
 1999年、日光の社寺


■ヨーロッパ建築

書店などにも、世界遺産関連の本がいろいろと発売されており、内容を見てみると、なかなかすごい数の遺産が登録されている。「世界の旅行通」を自称する私でも、ほとんど名前すら知らないものも多く、また、ほとんど見ていないものばかりなのである。地球の狭さを感じる現代の情報時代の中において、地球の広さと深さを痛く認識するところである。

さて、この世界遺産の種類なのだが、初めにも書いたように、人類の創造物に対する「文化遺産」と地球の記憶ともいえる大自然が生み出した「自然遺産」の2つを基本とし、その二つを併せ持った「複合遺産」との3つに分けられている。

この人類の想像の賜である「文化遺産」なのだが、この中でその時代の文化の象徴としての建造物、建築物などに絞って、登録リストや書籍、写真集などをよくよく眺めてみると、ヨーロッパという地域には本当に素晴らしい芸術的な建造物が多い。

このHPでもお伝えした、バチカン市国のサンピエトロ大聖堂や礼拝堂、イタリアはヴェネツィアのサン・マルコ広場や教会(ビザンチン様式/ゴシック様式)、ドゥカーレ宮殿(一部ルネッサンス様式)、フランスはランスのノートルダム大聖堂(ゴシック様式・右上写真:170年かけて建設された)やサン・レミ修道院(一部ロマネスク様式)、イギリスのウエストミンスター・パレス/アビー(ゴシック・リバイバル様式)、聖マーガレット教会(イギリス・ゴシック様式)、その他数えればきりがないほどの優れた建造物が、特にヨーロッパ各地に多く存在する。


■古代ギリシャ様式〜バロック様式

この、ヨーロッパの建築様式であるが、この話しに及ぶと古代ギリシャ時代に遡らなければならない。パルテノン神殿(ドリス様式)などの残された遺跡の柱の装飾の違いから推測し、ドリス様式、コリント様式、イオニア様式などに分かれるそうである。

これらの様式を基にして、ローマなどの各ヨーロッパに広がりを見せ、ローマで発明されたという「アーチ(構造)」を基本にした古代ローマ建築(様式)から、バジリカ様式、ビザンチン様式、ロマネスク様式、ゴシック様式、ルネッサンス様式、バロック様式へと、時代の移り変わりや流行などどともに変わっていったのである。


ロマネスク様式10〜12世紀「ロマネスク」とはローマ風という意味で、円形アーチが天井などの荷重を支える構造になっている。
ゴシック様式14〜15世紀ロマネスク様式からの円形アーチを進化させた「尖頭アーチ」を使用し、より構造的に強度が増した。これにより、高い天井や薄い壁、ステンドグラス装飾などが可能になった華やかな様式である。
ルネッサンス様式15〜16世紀ルネッサンスとは、ギリシャ・ローマの学問芸術の復興運動であり、建築の分野に及んでは、装飾の多いゴシック様式からまた昔の円形アーチを使用したスタイルに戻り、古典的な円柱が用いられている。
イタリアを中心に全ヨーロッパに広がりを見せた。
バロック様式17世紀〜18世紀シンプルなルネッサンス形式の反動から生まれ、ルネッサンスの円形アーチなどを踏襲しながら、曲線を使用し、不規則な形が特徴。



■建築文化を牽引した宗教建築

これらの建築は、おそらく当時の最高の建築技術と芸術の粋を集め建てられたものであると察する。ゴシック様式の丹念で見ていても気が遠くなるぐらい手の込んだ細い柱の細工や装飾、バロック様式のこれまた手の込んだ彫刻や装飾、とても現代の芸術などが及ぶ代物ではない。

さて、ここでお気づきの方も多いかと思うが、世界遺産級の建造物の多くが、教会、大聖堂、修道院、神殿、寺院といった宗教建築物なのである。 (先程の我が日本の誇る世界遺産の中でも、自然遺産2件をのぞいた文化遺産8件の中の5件がこの宗教建築ならびにその文化となっている)

これらヨーロッパの建築文化を牽引し、そして遺産としてのレベルにまで高めたのは宗教建築なのである。というよりも、当時の人々の神(キリスト)に対する畏敬の思いと信仰の強さが建築技術のレベルを向上させたといえるのである。人々の神への畏敬の思いは、建築芸術と融合し、美しい建築を含めたヨーロッパ文化を作り出し、それは宗教に基づいた健全な精神的な文化が根底にあったからこそなのである。




さて、世界遺産は美しい芸術や自然といった内容で選定されるわけではない。
文化的伝統や文明に関する証拠を示しているものや、その存続が危うくなっている場合(文化遺産)、絶滅のおそれのある野生生物の保全にとって重要な自然の生息・生育地を含むこと(自然遺産)、といったように、学術的、考古学的な一面もある。また、ポーランドのアウシュウビッツ収容所跡や広島の原爆ドームなど人類の「負の遺産」も登録されていることは誰もが知るところである。

いわば、人類の歴史、人類が生きた証、地球の歴史そのものを証明するこの星の宝である。
現代においても何か宝といえるような証を残したいと思うところだが、ヨーロッパ建築に見る精神的文化という点を考えると、私たちはこの合理的な時代に、何を残すことができるだろうか。







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